「ねぇ、どう思う?」
私は友人のリサにそう問いかけた。カフェの窓辺に並んで座りながら、カップの中の冷めたコーヒーをぼんやりと見つめていた。
「どう思うって…何が?」
リサはストローをくわえながら私に視線を送る。彼女の真剣な表情に、少しだけ言いづらくなってしまう。でも、このまま黙っていても何も変わらないことは分かっていた。
「…彼氏のこと。」
その言葉を口にすると、リサは大きく目を見開いた。
「またケンカしたの?」
「ううん、今回はそうじゃないの。ただ…最近、彼と一緒にいてもなんか、気持ちがすれ違ってる気がして。」
リサは驚いたようにストローを置き、少し身を乗り出すようにして私を見つめる。
「それ、具体的にどういうこと?」
「たとえばさ、昨日もそうだったんだけど、彼とご飯食べに行ったのに、ずっとスマホをいじってて…話しかけても返事が適当でさ。」
「あぁ…それはちょっときついね。」
リサがため息をつきながら言う。そう、これが続いている。最初は楽しくて、一緒にいるだけで嬉しかったのに、最近は会話も少なくなって、彼の態度がどこか冷たい。
「でもさ、最初の頃は全然違ったんだよ。彼、すごく優しくて、毎日連絡もくれて、デートだって積極的に誘ってくれてたし。」
「それが、どうしてこうなっちゃったんだろうね。」
リサの問いかけに、私は自分でも答えが出せないでいた。自分が悪いのか、それとも彼が変わってしまったのか。考えても考えても答えが見つからない。
「でも、まだ3ヶ月だよ? 付き合い始めてそんなに経ってないし、なんとかなるんじゃない?」
「そうかもしれないけど…最近、一緒にいても楽しいって思えないんだよね。」
その言葉を口にした瞬間、自分の胸の中に溜まっていたモヤモヤが少しずつはっきりとした形を帯びてきた。リサは黙って私の顔を見つめ、何かを考えている様子だった。
「それって…もしかして、もう彼のことが好きじゃなくなってきてるんじゃない?」
リサの言葉に、私は一瞬だけ言葉を失った。そんなこと、今まで考えたこともなかった。でも、もしかしたら、それが真実なのかもしれない。
「…分からない。でも、最近彼のことを考えると、ただイライラしちゃうんだよね。」
「それなら、無理して付き合う必要ないんじゃない? 恋愛って、楽しいはずでしょ? もちろん、辛い時もあるけどさ、今の君の状態って、彼のことを考えるだけでストレスになってるように見えるよ。」
リサの言葉は、まるで心の中を見透かしているようだった。確かに、今の自分は彼と一緒にいることで楽しいというよりも、どこかで不満を抱えている。でも、彼との思い出があるからこそ、簡単には別れられない。
「でもさ、最初の頃は本当に好きだったんだよ。あの頃の彼に戻ってほしいって、まだ思っちゃうんだよね。」
「うん、それは分かる。だけど、もし彼が今の状態を変えるつもりがないなら、君はどうする? ずっとこのまま我慢して付き合い続けるの?」
リサの問いかけに、私はまた沈黙した。彼が変わる可能性はあるかもしれない。でも、それを待ち続ける自信が、自分にはもうないのかもしれない。
「別れた方がいいのかな…」
呟くようにそう言うと、リサは少し笑いながら肩をすくめた。
「それは自分で決めることだよ。でも、少なくとも自分が幸せじゃないなら、その関係を続ける意味はないと思う。」
その言葉が、私の心に深く響いた。彼との関係を続けたい気持ちと、別れるべきだという現実。その間で揺れ動いていた私の心が、少しずつ答えに近づいていく。
夜になって、私は彼にメッセージを送った。私たちの関係をどうするべきか、正直に話し合おうと。そして、彼からの返事を待つ間、私はリサの言葉を何度も思い返していた。果たして、彼との関係は修復できるのか、それとも別れの選択をするのか。どちらにしても、私の心はもう一歩を踏み出そうとしていた。
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