新学期が始まると同時に、桜の花びらが舞う春の朝。高校二年生の私は、いつものように駅から学校までの道を歩いていた。その日は特別な日だった。転校生がやってくるという噂が広まっていたからだ。
教室に入ると、すでに友達の美咲と奈々が私を待っていた。
「陽菜、おはよう!今日、転校生来るんだって!」美咲が興奮気味に言った。
「うん、知ってるよ。どんな子だろうね?」私は軽く笑って返したが、内心は少し緊張していた。
授業が始まり、担任の先生が教室に入ってきた。
「皆さん、おはようございます。今日は新しいクラスメイトを紹介します。」
教室のドアが開き、一人の少年が入ってきた。黒い髪を短く切り揃え、少し無愛想な表情を浮かべている。彼の名前は、藤田拓也。
「藤田拓也です。よろしくお願いします。」
彼の冷たい印象に一瞬戸惑ったものの、私は彼に興味を持った。席が決まると、偶然にも彼は私の隣に座ることになった。
昼休み、私は思い切って拓也に話しかけてみた。
「藤田くん、よろしくね。佐藤陽菜です。」
拓也は一瞬驚いたように目を見開いたが、すぐに微笑んで答えた。
「よろしく、佐藤さん。」
その瞬間から、私の心に小さな変化が生まれた。冷たい外見とは裏腹に、拓也の内面には何か温かいものがあると感じたのだ。二人の間に芽生えた友情は、やがて予想もしない形で恋愛へと発展していく。
新学期が始まってから数ヶ月が過ぎ、私は少しずつ拓也と仲良くなっていた。私はテニス部、拓也は写真部に所属していた。夏休みが近づくと、部活動の合宿や大会の話題が増えてきた。
ある日、部活動の時間に、テニス部の顧問が言った。
「今年の夏休みは、写真部と合同で合宿を行います。テニスの試合だけでなく、写真撮影も楽しめる企画です。」
私は驚きと共にワクワクした気持ちを抑えきれなかった。写真部と一緒に活動するということは、拓也とももっと時間を過ごせるということだったからだ。
合宿初日、みんなが集合し、活動が始まった。テニス部は朝から厳しい練習を行い、午後は写真部と共に撮影を楽しむというスケジュールだった。
午後の活動が始まり、拓也がカメラを手にして近づいてきた。
「佐藤さん、写真撮らせてもらってもいい?」
「もちろん!どんなポーズがいいかな?」
私は笑顔で答え、自然体でテニスコートに立った。拓也はカメラを覗き込みながら、私の動きを見つめていた。
「いいね、そのまま動いて。自然な感じが撮りたいんだ。」
私はボールを打つ姿を撮影されながら、少しずつ緊張がほぐれていった。撮影が終わると、拓也はカメラのモニターを見せてくれた。
「見て、こんな感じで撮れたよ。」
モニターに映る私の姿は、生き生きとしていて、まるでプロの写真のようだった。
「すごい!ありがとう、藤田くん。」
その後も、私たちは一緒に撮影やテニスの練習を続けた。拓也は私のプレーを撮影し、私は時折カメラの使い方を教わりながら、彼との距離を縮めていった。
夏休みが終わる頃には、私たちの間には固い友情が芽生えていた。私は拓也に対して、ただの友達以上の感情を抱くようになっていたが、それを言葉にする勇気はまだなかった。
そんなある日、合宿最後の夜に、部活動のメンバーで肝試しをすることになった。私は拓也とペアになり、暗い森の中を歩くことに。
「怖くない?」拓也が心配そうに聞いた。
「ちょっと怖いけど、拓也くんがいるから大丈夫。」私は勇気を振り絞って答えた。
二人が森の中を歩いていると、突然、大きな音がして目の前に何かが飛び出してきた。私は驚きのあまり悲鳴を上げ、拓也にしがみついた。
「何これ!?」私が叫ぶと、飛び出してきたのは他の部員たちだった。彼らは私と拓也を驚かせるために計画していたドッキリだったのだ。
「びっくりした?」美咲が笑いながら言った。
「もう、びっくりしたよ!」私は笑いながらも少し怒った顔をしていたが、拓也が肩を抱いてくれたおかげで心が落ち着いた。
その夜、みんなが一緒に楽しみ、笑い合った。ドッキリの一件は私たちの絆をさらに深めるきっかけとなった。
翌朝、合宿が終わるとき、拓也は私にそっと言った。
「昨日のドッキリ、少し怖かったけど、君と一緒だったから楽しかった。これからも、ずっと一緒にいたい。」
私は顔を赤らめながらも、心から同じ気持ちで答えた。
「私も、拓也くんとずっと一緒にいたい。」
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